環境や気候変動に対する企業の取組みを評価するCDP
地球の環境問題への意識は、危機感をもって年々高まっています。
とくに企業の経済活動においても、環境への配慮がなされていることが重要視されるようになってきました。
消費者である個人個人も、株主である投資家も、それぞれの企業の環境への取り組みに目を向け始めています。
そんな中で、その企業が地球環境への影響を配慮して経営がなされているかをわかりやすく判断できる指標のようなものが求められています。
企業の環境問題への取り組みを評価する指標として注目されているのが、CDPスコアです。
CDP(Carbon Disclosure Project)は、企業が気候変動や環境への影響に対する取り組みを開示するための国際的な非営利組織です。
CDPは、2000年にイギリスのロンドンで設立されました。
その発端は、気候変動の影響が深刻化する中で、企業が自身の温室効果ガスの排出量や環境への影響を把握し、対策を講じるための需要が高まったことにあります。
設立当初、CDPはイギリスの76の機関投資家からの要望に応える形でスタートしました。
これらの投資家は、企業の気候変動への対応や環境への影響を評価するための情報にアクセスする必要性を感じていました。
CDPは、企業に対して気候変動に関する情報を開示するよう要請し、その情報を一般に公開することで、投資家やその他の利害関係者が持続可能性を考慮した意思決定を行えるようにすることを目指して設立されました。
その後も、企業の環境への影響を透明化し、持続可能性に関する情報を提供するプラットフォームとして成長し、世界各国の企業や投資家、政府と連携しながら、気候変動や環境に関する情報の収集・公開を促進しています。
また、CDPが企業につけるスコアは、投資家が企業に投資する際の重要な基準の一つとして、ますます重視されるようになっています。
CDPのスコアは、企業の温室効果ガスの排出量削減目標や取り組み、水資源管理、森林保護などの環境に関する様々な側面を評価し、総合的な評価を行います。
環境への影響や持続可能性に対する企業の取り組みは、投資家にとって重要な要素となっており、CDPが企業の環境への透明性や効果的な取り組みを評価することで、投資家は持続可能性を考慮した投資判断を行う際の情報源として利用しています。
CDPが企業につけるスコアは、消費者にとっても重要な情報源となっています。
環境への取り組みや持続可能性に対する企業の姿勢は、消費者の購買意思決定に影響を与える要因の一つとなってきています。
消費者は、企業が環境に対する責任を果たしているかどうかを重視し、自身の消費行動が地球環境や社会への影響にどのような影響を与えるかを意識しています。
持続可能性に配慮した製品やサービスを提供する企業は、消費者からの支持を得やすくなります。
そのため、CDPの評価が高い企業は、消費者の信頼を得やすく、ブランド価値の向上や市場競争力の強化につながります。
CDPの評価は企業にとっても重要であり、高いスコアを獲得することで、投資家や消費者からの信頼を得るだけでなく、持続可能性への取り組みを強化する動機付けとなっています。
CDPは、企業に対してアンケート形式で環境に関する情報を提出するように要請し、その情報を集約して公表します。
CDPは、気候変動、水、森林などの環境に関する情報を企業から収集するために、さまざまな質問書を使用しています。
これらの質問書は、企業が自身の環境への影響や持続可能性に対する取り組みを詳細に報告するための枠組みを提供し、CDPの評価やランキングの基礎となります。
質問書には、気候変動質問書(Climate Change Questionnaire)、水セキュリティ質問書(Water Security Questionnaire)、フォレスト質問書(Forest Questionnaire)の3つがあります。
CDPの気候変動質問書は、業が過去数年間の温室効果ガス(GHG)排出量の推移や、将来のGHG排出削減目標を設定しているかどうかを尋ねます。
また、企業のエネルギー消費状況やエネルギー効率改善の取り組みについても調査します。
例えば、企業がどの種類のエネルギー源を使用しており、再生可能エネルギーの利用がどれくらい進んでいるかを把握します。
再生可能エネルギーへの投資や新たな技術の開発、低炭素製品やサービスの提供など、気候変動に関連するビジネスチャンスの具体的な活用例を報告することが求められます。
CDPの水セキュリティ質問書は、企業の水資源管理や水利用の効率化、水関連リスクの評価など、水に関連するさまざまな取り組みについて詳細に尋ねます。
具体的には、企業が自社の水使用量や水資源の起源、水資源の状況、水関連リスクの特定と評価、水リスク管理の計画や取り組み、水ストレスの緩和策などについて報告する必要があります。
また、企業が水資源の持続可能な管理にどのように取り組んでいるか、水使用効率を向上させるための措置や再利用プログラム、地域社会との協力などの取り組みも詳細に報告されます。
さらに、企業が水関連リスクにどのように対処し、水不足や水汚染などのリスクを最小限に抑えるための戦略や計画を策定しているかについても尋ねられます。
CDPのフォレスト質問書は、企業が自社の森林資源の利用状況や森林保護活動、森林認証の取得状況、森林伐採に伴うリスクの評価や対策、森林保全プロジェクトへの投資などについて報告する必要があります。
具体的には、企業がどのような森林資源を利用しており、その森林資源の持続可能性や森林管理の実践について報告します。
また、企業が森林保護のための取り組みや森林保護プロジェクトへの投資を行っているかどうか、森林認証を取得しているかどうか、取得している場合はどのような認証を受けているかについても詳細に説明します。
さらに、企業が森林伐採に伴うリスクをどのように評価し、それに対する取り組みやリスク管理戦略をどのように策定しているかについても報告されます。
これらの3つの質問書は2024年の4月から統合されて、いくつかの変更を加えることになっています。
これらの質問書によるCDPのスコアにより、企業の環境への影響や持続可能性に関する透明性が高まり、投資家や消費者、政府などが持続可能な企業活動を評価しやすくなっています。