サンマの不漁はなぜ?原因と言われる海洋熱波とは
近年、日本のサンマ漁は深刻な不漁に見舞われています。
かつては豊富に漁獲されていたサンマですが、2019年以降その量が大幅に減少し、2020年には戦後最少の漁獲量を記録しました。
この不漁の影響で、漁期が短縮されることが多くなり、出漁回数も減少しています。
漁師たちは十分な量のサンマを捕ることができず、その結果として収入にも大きな打撃を受けています。
サンマの不漁の主な原因は、海洋熱波の発生による海水温の異常な上昇です。
海洋熱波とは、通常の季節変動を超えて海水温が異常に高くなる現象で、数日から数週間、時には数ヶ月にわたって続くことがあります。
この海水温の上昇は、サンマの生息環境に重大な影響を及ぼします。
サンマは冷水を好む回遊魚であり、適切な水温帯で生活していますが、海洋熱波によって海水温が上昇すると、サンマが快適に生息できる水温帯が北に移動するため、日本近海での漁獲が難しくなります。
これは、日本の漁場からサンマが遠ざかることを意味し、漁業者がサンマを捕るためにより遠くまで出漁しなければならない状況を生み出します。
さらに、海水温の上昇はサンマの食物連鎖にも影響を及ぼします。
サンマの主な餌であるプランクトンは、海水温や栄養塩の濃度に敏感です。海水温が高くなると、プランクトンの分布が変わり、特にサンマにとって必要な種類のプランクトンが減少することがあります。
サンマの餌資源が減少し、成長や生存率が低下します。
また、栄養不足によってサンマの体力が低下し、繁殖力にも影響を与える可能性があります。
加えて、温暖化の影響で海洋の酸素濃度が低下することもサンマの不漁に寄与しています。温暖な水温は海水中の酸素溶解度を低下させるため、サンマが十分な酸素を得られない状況が発生します。
これにより、サンマは酸素濃度の高い冷水域を求めて移動せざるを得なくなります。
さらに、海水温の上昇は有害な藻類の増殖を促進することがあり、このような藻類が繁茂するとサンマにとって有害な環境が形成されることがあります。
これらの複数の要因が相互に作用することで、サンマの不漁が深刻化しています。
海洋熱波の頻発と強度の増加は、地球温暖化と密接に関連しており、今後もこの傾向が続くと予測されています。
そのため、サンマ資源の持続可能な管理がますます重要になっており、漁業者や関連業界にとっては大きな課題となっています。
サンマの供給不足は市場価格の上昇を招き、かつては庶民の食卓に欠かせない「秋の味覚」として親しまれていたサンマが、高価な魚になりつつあります。
これに加えて、ロシアや中国などの国々がサンマ漁に力を入れているため、国際的な漁獲競争が激化し、日本近海での漁獲がさらに難しくなっています。
このようにサンマの不漁は、漁業者の生活や市場への影響だけでなく、長期的な供給の不確実性という問題も抱えています。
気候変動や海洋熱波の影響が続く中で、サンマ資源の持続可能性や適切な漁業管理がますます重要になっています。