手を洗う習慣があることの大切さ
新型コロナウイルスの蔓延により、手を洗い、消毒することが習慣になったという方も多いと思います。
手を洗うことでウイルスや細菌の感染を防ぐことができる。
当たり前のように思えるこの事実が、当たり前ではない時代がありました。
1800年代前半、もっとも清潔さを保たなければならないと思われる病院の医師は手術前に手を洗っていませんでした。
医師というものは紳士であるので清潔であり、手が汚れているはずがないという考えのもと、手術の時であっても、手を洗わず、手袋もせず、素手で臓器に触れていました。
出産後に死亡する女性が多かったその時代に、ハンガリーの医師のゼンメルワイス・イグナーツは調査をはじめました。
その結果、解剖実習で死体に触れた手でそのまま患者に手術などの措置を行っていたことを原因と捉え、ウィーン総合病院で手洗いを徹底したところ、死亡率は大幅に低下しました。
ゼンメルワイス医師はウィーン医学会で講演をしたり、論文を発表したりしましたが、当時の医学界の常識と反していたため、受け入れられず、批判さえもされていました。
多くのの医師が感染症の予防のため手を洗うようになったのは、ゼンメルワイス医師が亡くなった後の1800年代の後半になってからでした。
今からわずか150年程前です。
日本では今、外出後に手を洗うべきであるということは、子供の頃から手洗いを指導されて常識になっています。
手を洗おうと思えば、石鹸で洗うことができます。
世界に目を向けると、手洗いはまだまだ常識にはなっていません。
リベリアでは手洗いの設備を利用できる人は全体の1%しかいません。
世界の43%の学校には手洗いの設備がなく、8億人を超える子供たちが学校で手を洗うことができません。
5歳にならないうちに亡くなる子供は年間520万人。
その原因の多くは下痢や肺炎などの感染症で不衛生であることで、手洗いをしていれば防ぐことができたかもしれません。
まずは、手洗いの大切さを伝えて広めて、設備を整えていき、手洗いが習慣になっていくことで感染症に強い世界になっていきます。
2008年の国際衛生年に「世界手洗いの日」が制定されました。
以降、毎年10月15日が「世界手洗いの日」となり、世界中で多くの手洗い普及活動が行われています。