高額医療費を払い戻しできる高額療養費制度の限度額と申請手続き
目次
- 高額な医療費は払い戻してもらえる高額療養費制度
- 高額療養費制度の申請手続き
- 70歳未満の高額療養費制度の自己負担限度額
- 70歳以上の高額療養費制度の自己負担限度額
- 高額療養費制度の多数回該当
- 高額療養費制度の世帯合算
高額な医療費は払い戻してもらえる高額療養費制度
高額療養費制度とは病院などの医療機関や薬局などで1カ月に支払った金額が一定以上の高額な金額になった場合に払い戻してもらえる制度です。
公的医療保険の制度の1つで所得や年齢よって医療費の自己負担上限の金額が定められています。
>>70歳未満の高額療養費制度の自己負担限度額
>>70歳以上の高額療養費制度の自己負担限度額
医療機関で高額な支払いが発生した場合には、まずは自己負担で支払いを済ませます。次に、健康保険窓口に「健康保険高額療養費支給申請書」を提出します。その後、書類やレセプトなどの審査が行われて払い戻しとなります。通常、払い戻しまでには3カ月以上の時間がかかります。
払い戻しまでに3カ月以上という時間が掛かるため、高額な医療費の支払いを貸し付ける「高額医療費貸付金」という制度もあります。この「高額医療費貸付金」を利用すれば、支給見込額の80%に相当する額を、無利子で借りることができます。
また、高額な医療費を支払うことがあらかじめ分かっている場合、限度額適用認定証を使うことで支払いを軽減することもできます。70歳未満の人が診察を受ける時に健康保険証と一緒に限度額適用認定証を提示すると、その1カ月間の支払いは高額療養費制度の自己負担限度額までとなります。
高額療養費制度の申請手続き
高額療養費制度の申請窓口は、会社員の方や公務員の方は加入している健康保険の窓口になります。多くの場合、職場の担当者に相談することで必要な手続きをしてくれたり、必要書類を教えてもらえます。
国民健康保険に加入している場合は市区町村の役所の窓口になりますので、役所に足を運ぶ必要があります。
申請の際に必要な書類は、健康保険証、印鑑、医療機関の発行した領収書になります。
たとえば、全国健康保険協会に申請を出す場合は、「健康保険高額療養費支給申請書」を提出することになります。被保険者、被扶養者、世帯合算のいずれの場合も申請できます。支給申請書には、被保険者または申請者の氏名や生年月日などの情報、振込先指定口座の情報、申請内容の詳細、支払った金額など、指定の項目について記入をします。記入箇所がたくさんありますので、漏れのないように注意しましょう。
70歳未満の高額療養費制度の自己負担限度額
高額療養費制度では、年齢や所得によって自己負担限度額が定められています。70歳未満の場合は所得によって5段階の区分に分かれています。
区分ア 標準報酬月額83万円以上の方
総医療費から84万2000円を引いた額に25万2600円を足して1%を掛けた額が自己負担限度額となります。
区分イ 標準報酬月額53万円~79万円の方
総医療費から55万8000円を引いた額に16万7400円を足して1%を掛けた額が自己負担限度額となります。
区分ウ 標準報酬月額28万円~50万円の方
総医療費から26万7000円を引いた額に8万100円を足して1%を掛けた額が自己負担限度額となります。
区分エ 標準報酬月額26万円以下の方
自己負担限度額は5万7600円となります。
区分オ 市区町村民税が非課税の方
自己負担限度額は3万5400円となります。
高額の療養費負担が直近の12カ月のうち3カ月以上ある場合は4カ月目以降から自己負担限度額が下がります。これを、多数該当高額療養費と呼び、以下の金額になります。
区分ア 140,100円
区分イ 93,000円
区分ウ 44,400円
区分エ 44,400円
区分オ 24,600円
70歳以上の高額療養費制度の自己負担限度額
70歳以上75歳未満の高額療養費制度の自己負担限度額は3つの所得区分に分かれています。
1.現役並みの所得がある方
具体的には、標準報酬月額が28万円以上、また、高齢受給者証の負担の割合が3割である人が対象となります。
個人の外来の場合は4万4400円が自己負担限度額です。世帯での外来・入院の場合は医療費から26万7000円を引いた額に8万100円を加え1%を掛けた額が自己負担限度額となります。高額の療養費負担が直近の12カ月のうち3カ月以上ある場合は、4カ月目以降から自己負担限度額が下がり44,400円になります。
2.一般的な所得者の方
具体的には、標準報酬月額が28万円未満で、且つ低所得者ではない人が対象となります。
自己負担限度額は個人の外来の場合は1万2000円です。世帯での外来・入院の場合は4万4400円となります。
3.低所得者の方
「市区町村民税が非課税の場合」「世帯全員の収入から必要経費と控除額を引くと所得がない場合」に分けられます。
「市区町村民税が非課税の場合」の自己負担限度額は、個人の外来の場合は8000円です。世帯での外来・入院の場合は2万4600円となります。
「世帯全員の収入から必要経費と控除額を引くと所得がない場合」の自己負担限度額は、個人の外来の場合は8000円です。世帯での外来・入院の場合は1万5000円となります。
70歳以上75歳未満が医療機関で支払う一部負担金は、平成20年度の軽減特例措置によって1割となっていました。しかし、平成26年4月1日からは制度の変更がありました。たとえば、平成26年4月1日以降に70歳をむかえる人は、70歳の誕生月の翌月から2割負担となります。なお、70歳以上75歳未満の高額療養費算定基準額などが引き上げられる予定になっていましたが、負担の増加を考慮して見送られることになりました。
高額療養費制度の多数回該当
高額療養費制度では直近12か月のうちすでに3月分の制度を利用している方は4月目である4回目以降は多数回該当として、さらに自己負担額を引き下げてもらえる制度があります。
多数回該当は同一保険者である事が条件であり、健康保険組合から国民健康保険などに保険の種別が変わった場合なども適用外です。さらに多数回該当は同一被保険者が対象であり、被保険者から被扶養者に変わった場合なども同様に適用されません。
70歳以上で区分が「一般」「低所得者」である人は多数回該当には当たりません。
高額療養費制度の世帯合算
高額療養費制度には、「世帯合算」といわれる家族の医療費を合算して請求できる制度があります。
世帯合算とは、同じ世帯の複数の人が同時に病気やけがなどで医療機関を受診した場合、または一人が複数の医療機関を受診した場合や、同じ医療機関で入院、通院となった場合、世帯で支払った分の医療を合算して、その額が医療費の自己負担額を超えた場合には、超えた額が払い戻されるという制度です。
この制度を利用すれば、個人では自己負担額が高額医療費の請求範囲に届かなくても、家族で合算する事により、医療費をまとめて請求できることになります。
70歳以上の人は金額関係なしに自己負担額の合算が出来ますが、70歳未満の人は合算できる自己負担額は21,000円以上の場合のみです。
70歳未満の人の合算の方法は、同じ医療機関であっても、たとえば科ごとによって、入院か通院によって分けて計算される事になります。薬などの処方を受ける場合は、薬局に支払った額と処方箋を出した医療機関の負担額は合算して計算できます。
世帯合算でも直近1年に3回以上高額療養費の限度額を超えると4回目からは限度額が引き下げられる事もありますので、時効である2年以内に加入している健康保険の窓口に問い合わせしてみましょう。また、世帯合算できる条件は合算する世帯が同じ健康保険に加入している事が条件です。