ドイツの地球温暖化対策に学ぶ
前回はフランスの地球温暖化対策についてみてきました。
フランスはもともと原発大国で電力の70%を原子力発電が占めていましたが、日本の東京電力による事故などの要因によりそのリスクを考慮し、原発比率を50%にしつつ、交通などからの二酸化炭素排出を抑えていくという方向性です。
今回のドイツは再生可能エネルギーへの転換により、カーボンニュートラルを目指しています。
C02の排出量が多い飛行機の運賃を上げる一方で、鉄道の長距離運賃を下げていくなどの具体的で大規模な温暖化対策を進めていますが特徴はエネルギー政策です。
ドイツでは原子力発電所をゼロにして、化石燃料を削減し、再生可能エネルギーを軸にしたエネルギー戦略に転換していくという「Energiwende」というエネルギー戦略をとっています。
二酸化炭素排出量を減らしつつ、原子力にも依存しないという理想的なエネルギー戦略であります。
当初はその実現に懐疑的な見方もありましたが、ドイツは着実に目標を達成しつつあります。
かつて6%ほどにすぎなかった再生可能エネルギーの電力比率は30%に増加し、風が強い日であったり、晴れている日については電力供給の半分をまかなえるレベルにまで達しています。
さらに2025年までには40%~45%、2035年までには55%~60%、2050年までには80%にするという目標を設定しています。
日本も2030年までに再生可能エネルギーの電力割合を20%超にまで伸ばす目標を設定していますが、達成の道筋がはっきり見えてきません。
日本ではあまりうまくいっていない再生可能エネルギー普及のための固定価格買取制度ですが、ドイツでは再生可能エネルギーによって発電された電気を優先的に送電網にのせることを保証していて、再生可能エネルギーの普及に大きな役割を果たしています。
チェルノブイリ原発事故に危機感を抱き、酸性雨による森林破壊を目の当たりにしてきたドイツ国民の環境への意識は高く、その世論が国や企業も動かしています。
ドイツでのビジネスマンのやりとりでは、「カーボンフットプリント」について聞かれることも多くなっています。
カーボンフットプリントとは直訳すると炭素の足跡で排出するC02の排出量のことを指しています。
ビジネスの取引をするに当たって相手企業のカーボンフットプリントを指標としているわけです。
また、再生可能エネルギー事業の雇用も増加していて、これまでの旧型のエネルギー事業を上回る約40万人の雇用が創出されています。
ドイツでは、こうした目に見える形での環境政策の前進がさらに環境意識を高まりを生んでいます。