MSC認証やASC認証を受けたサステナブル・シーフード
水産物は現在、世界で最も広く取引されている食料品の一つであり、その需要は急速に増加しています。
世界人口の増加とともに、人々の食習慣の変化や栄養摂取の意識向上により、魚介類は重要なたんぱく質源として重視されています。
加えて、医学的な研究によって魚介類が健康に良いとされ、その消費が奨励されることも需要の増加を後押ししています。
一方で、この急激な需要増加には課題も潜んでいます。
その一つが魚の乱獲です。
漁業活動が過剰に行われると、漁獲される魚の数が再生能力を上回るレベルにまで達してしまいます。
過去数十年にわたり、技術の進歩や漁業の拡大により、一部の魚種は非持続可能な水準で漁獲され、生息数が急激に減少しています。
乱獲は生態系全体に連鎖反応を引き起こし、他の生物種にも悪影響を及ぼします。
例えば、ある魚種が乱獲されると、その餌となる生物の数が増加し、それが他の魚種の生態系に影響を与えることがあります。
さらに、漁獲対象外の種も混獲として影響を受け、海洋の生態系がバランスを失う可能性があります。
また、気候変動の海洋生態系への影響もますます深刻化しています。
地球温暖化により、海洋の表面温度が上昇し、これが生態系内の生物に影響を与えています。
例えば、魚やサンゴなどの海洋生物は特定の温度範囲で生息できるため、温暖化によって生息域が変化し、適応できない生物は減少する傾向にあります。
気候変動は海洋循環や海流にも変化をもたらし、これが生態系に影響を及ぼします。
海流の変動は魚の回遊パターンを変化させ、漁業資源の分布に影響を与えます。
これにより、特定の地域での漁獲量が変動し、漁業従事者への影響も大きくなります。
未来でも漁業が営まれるために配慮した方法で獲られた水産物をサステナブル・シーフードといいます。
MSC(Marine Stewardship Council)認証やASC(Aquaculture Stewardship Council)認証を受けた漁業は、サステナブル・シーフードであることを示す重要な指標です。
MSC認証やASC認証のマークを気にかけることで、魚が適切な漁業により得られたものかを消費者側も意識できるようになります。
MSC認証は野生の漁業に対して与えられ、持続可能な漁獲慣行を遵守している漁業がこれを受けることができます。
MSCは科学的なデータと専門家の評価を基に、漁獲が適切で、魚の生息数や生態系に悪影響を及ぼしていないかを評価します。
一方、ASC認証は養殖業に焦点を当てており、持続可能で責任ある養殖を推進する漁業が該当します。
ASCは養殖業者が環境への影響を最小限に抑え、社会的な側面にも注意を払いながら生産しているかを評価します。
これには養殖された魚が適切な餌で育てられ、疾病や薬品の使用が管理されているかどうかも含まれます。
両認証は独立した第三者機関による厳格な審査を受け、特定の基準をクリアした漁業が認証を取得できるようになっています。
これにより、消費者は製品の購入時に、MSCまたはASCのロゴが付いていれば、その水産物が環境に優しく、社会的な責任を果たしていることを確認できます。
これらの認証は、サステナブル・シーフードの普及と水産業の持続可能性向上に向けた重要な取り組みとなっています。