漁具の幽霊のゴーストギアの影響は
漁業においてのゴーストギアとは、放置または紛失された漁具や装置、特に漁網や漁具などが海底に放置されているものを指します。
海底に沈んだ漁具は回収されないままとなり、まさに漁具の幽霊となります。
国際連合食糧農業機関(FAO)や国際連合環境計画(UNEP)などの機関による研究や報告によれば、世界的には毎年数十万トンから数百万トンの漁具が海に放置されているとされています。
これらの放置された漁具は、海洋生態系に深刻な影響を与え、海洋生物の死亡や生息地の破壊などを引き起こす可能性があります。
ゴーストギアが海洋生態系に及ぼす影響は多岐にわたります。
放置された漁網や漁具は、海洋生物が絡まって死ぬ(ghost fishing)だけでなく、生息地の破壊や海底生態系の変化、さらには他の漁業活動にも影響を及ぼす可能性があり、海洋汚染の一因ともなります。
漁具はプラスチックから作られていることも多く、破損したり、放置されたりすることでプラスチックゴミとして海洋環境に影響を与えます。
海洋生物に絡まって死亡するだけでなく、長期間海洋環境中に残留し、微粒子やマイクロプラスチックとなることがあります。
これにより、海洋生物や生態系に悪影響を与えるだけでなく、食物連鎖を通じて人間にも潜在的なリスクをもたらします。
こうした問題に対処するために、さまざまな取り組みが行われています。
例えば、漁業者に対する教育や意識改革、漁具の管理や回収プログラムの実施、技術革新による海底の観察や回収などが挙げられます。
また、海の中で自然に分解されるプラスチックの研究も進んでいます。
海の中で自然に分解されるプラスチックは、バイオデグレード可能なプラスチックと呼ばれる種類のプラスチックです。
これらのプラスチックは、通常のプラスチックよりも環境への影響が少ないとされていますが、完全に自然に分解されるわけではありません。
バイオデグレード可能なプラスチックは、特定の条件下で微生物によって分解されることがありますが、このプロセスには時間がかかる場合があります。
海洋環境では、プラスチックが日光、塩水、波、微生物などの要因にさらされることで、徐々に分解されます。
しかし、このプロセスには数か月から数年かかる場合があり、その間に微小なプラスチック片やマイクロプラスチックが生成されることもあります。
また、バイオデグレード可能なプラスチックが十分に分解されずに残留することもあります。
これらの問題点をクリアにしようとする研究も進んでいます。
東京大学の伊藤耕三教授のグループは、通常は丈夫な素材だが、海に入ると分解が進む素材の開発に挑んでいます。
海洋特有の塩分濃度や弱アルカリ性の環境などの条件を満たすと、分解のスイッチが入り、分解されていくというものです。
材料には、生物由来のものを使用して、分解されると水と二酸化炭素になることで環境への影響を抑えます。
海洋環境におけるプラスチックの分解やバイオデグレード可能なプラスチックについては、他にも多くの研究が進行中です。