日本でも起こっているオーバーツーリズムによる悪影響とは
オーバーツーリズム(Overtourism)とは、観光地や地域が過剰な観光客の数によって影響を受ける現象を指します。
この現象は、観光客の増加によって地元住民の生活環境が悪化し、自然環境や文化財が損傷を受けるなどの問題を引き起こします。
オーバーツーリズムが発生する原因には、低コストの航空旅行の普及、SNSやインターネットを通じた観光地の露出増加、クルーズ船の寄港増加などがあります。
オーバーツーリズムは、環境に対してさまざまな悪影響を及ぼします。
まず、観光客の急増によって自然景観が破壊されることがあります。
例えば、自然公園やビーチに多くの人が訪れると、土壌が圧縮されて植物の成長が妨げられるなど、自然破壊につながります。
また、観光客の活動が野生生物の生息地を破壊し、動物たちの生活にも悪影響を与えることがあります。
特に、観光客が野生動物にエサを与えることで、動物たちの自然な行動が変わってしまうことが懸念されます。
さらに、大量の観光客が訪れることでごみの量が増加し、適切な廃棄処理が追いつかなくなることがあります。
この結果、海洋汚染や陸上の環境汚染が進行します。
交通手段の増加により排ガスが増え、空気の質が悪化することも大きな問題です。
加えて、観光施設からの排水や廃棄物が適切に処理されない場合、水質汚染が発生し、生態系に悪影響を及ぼします。
また、宿泊施設やレストラン、交通機関などでのエネルギー消費が増加することで地域のエネルギー資源に負荷がかかり、温室効果ガスの排出が増加して気候変動に寄与することも避けられません。
日本においてもオーバーツーリズムは、さまざまな地域で顕著な影響を及ぼしています。
例えば、京都市はその典型例です。
世界遺産に指定されている寺院や歴史的な街並みを持つこの都市は、年間を通じて多くの観光客が訪れます。
その結果、観光地周辺の交通渋滞が深刻化し、地元住民の日常生活に大きな支障をきたしています。
また、観光客が集中するエリアではごみの増加や騒音問題が発生し、地域の環境が悪化しています。
同様に、富士山周辺もオーバーツーリズムの影響を受けている地域の一つです。
登山者の急増により、山道やその周辺の自然環境が損なわれており、ごみ問題も深刻化しています。
特に夏の登山シーズンには、一日に数千人もの人々が訪れるため、トイレの不足や廃棄物の適切な処理が難しくなっています。
これにより、富士山の美しい自然景観が損なわれ、環境保護の観点からも大きな課題となっています。
また、東京や大阪などの大都市でもオーバーツーリズムの影響が見られます。
観光客の増加により、主要な観光スポットや公共交通機関が混雑し、地元住民が利用する際に不便を感じることが増えています。
特に、外国人観光客が多く訪れる浅草や道頓堀などでは、観光地周辺の住環境が変わりつつあり、地域住民との摩擦が生じることもあります。
このようなオーバーツーリズムの影響を軽減するために、日本各地ではさまざまな対策が講じられています。
例えば、観光客数の制限や観光地の分散を図る取り組み、環境保護のための啓発活動が進められています。
また、観光地へのアクセスを改善し、交通渋滞を緩和するためのインフラ整備も重要です。
観光客自身も、地元の文化や環境に配慮した行動を心がけることで、持続可能な観光の実現に寄与することが求められます。