5600万年前に起きた温暖化と海洋酸性化
恐竜が絶滅したのが今から約6,600万年前です。
それから現在に至るまでに最も地球が温暖であった時代が約5,600万年前と言われています。
その原因の一つが数千万年に一度とも言われるアイスランド近郊の海底での地殻変動です。
長さにして約3,000キロメートルに渡って海底が避けてマグマが噴出しました。
マグマとともに放出されたのが二酸化炭素です。
もちろん、海底から出た大量の二酸化炭素は大気中に放出されていきます。
その結果として、地球の平均気温は5度上昇しました。
このような現象が他の地域でも発生して、前期始新世と呼ばれる約5,600万年前から約5,200万年前までは超温暖化となった時代でした。
二酸化炭素の増加は海洋の環境にも大きな影響を与えました。
当時の海水はpH7.4まで酸性化が進んだといいます。
現在の海水の表面のpHか8程度ですから、かなりの海洋酸性化が進んでいたと言えます。
この危機を救ったのが植物プランクトンでした。
二酸化炭素が大幅に増加したこの時代に海にて植物プランクトンが大増殖しました。
植物プランクトンは光合成により二酸化炭素を吸収して炭素として蓄えます。
植物プランクトンは、死骸となって海底に沈んだり、他の魚に食べられることで、その炭素は海に蓄積されていくことになります。
以前も紹介した生物ポンプの仕組みです。
この生物ポンプのおかげで、地球は元の状態に戻りました。
その間にかかった時間は、約17万年です。
温暖化は短期間に進みますが、元に戻すには長い年月が必要になる事が、この過去の事例からもわかっています。
現在、約5,600万年前から約5,200万年前に二酸化炭素が大量に放出され続けた時代よりも速いスピードで二酸化炭素を排出し続けているとも言われています。
かつては、地殻変動などの自然現象が要因となりましたが、現在は地球の住民である種の人間の社会活動が要因となっています。
人間には、約5,600万年前のことを推測できる能力があります。
その能力を地球全体のために使えるかどうかが試されているような気がします。