羽がない風力発電がスペインでスタート
スペインは風力発電の強みと弱みのバランスをとりながら主要な電力として利用することを実現し、自然エネルギーへの転換を加速しています。
そんなスペインで今、注目されているのが羽根を使用しない風力発電です。
スペインのVortex Bladeless社が開発し、実用化もスタートしています。
一般的に風力発電というと、風車のように羽根が設置されていて、風を受けることで羽根が回転してエネルギーを得ていくというものが想像されます。
今回、Vortex Bladeless社が実用化したVortexには、いわゆる羽根がなく、柱が地面に建てられているだけの形状になっています。
実際に使用されている動画を見ると、この柱のようなものが振動している様子が確認できます。
この振動を利用してエネルギーを得ているのですが、利用しているのは渦励振(うずれいしん)という空気力学の現象です。
物体にはそれぞれ固有振動数という最も揺れやすい振動数というものがあります。
また、風が物体に衝突すると空気の渦の振動が起きます。この風の渦の振動数と物体の固有振動数が一致すると共振現象を起こして、物体が大きく揺れます。
この揺れを利用しているのがVortexのしくみです。
たとえば、建築の世界では建物の固有振動数と地震の振動数(周波数)が一致して共振を起こさないように設計されていますが、その逆の発想からこの風力発電システムが生まれたと言えます。
たまに洗濯機が洗濯中に大きく音をたてて揺れることがあるのですが、これも洗濯槽の振動数と洗濯機本体の固有振動数が一致して共振を起こしたときの現象になります。
Vortexは、発電機自身の固有振動数を変更できるため、その時の風が起こす振動数に合わせて調整することができるため、風速3メートル程度でも共振を引き起こしてエネルギーを発生させることに成功しています。
価格も日本円で25,000円程度と低価格になっています。
風力発電のデメリットである周辺の騒音被害や鳥を巻き込んでしまうバードストライクの問題も解消しています。