垂直農業の弱点とそれを克服する工夫
垂直農業は温室効果ガス排出の削減に貢献できると期待されています。
垂直農業は都市や人口密集地で行われるため、食品の輸送距離が短くなります。
従来の農業では、食品は農場から長い距離をトラックや船で運ばれることが一般的ですが、垂直農業では都市の中で生産され、直接市場に供給されるため、輸送に伴う燃料消費と排出量を削減することができます。
これにより、食品の新鮮さや品質が保たれ、運送に伴う品質の低下や廃棄物の削減が期待できます。
長距離の輸送ではトラックや船などの輸送手段が使用されるため、その分の燃料消費や二酸化炭素排出が増えます。
垂直農業では都市内で生産された作物を直接消費地に供給できるため、輸送に伴うエネルギー使用量や排出量を削減することができます。
また、通常の平面の農地よりもはるかに多くの作物を生産できるため、土地の利用効率が向上します。
これにより、農地の拡大や新たな開発の必要性が減少し、森林の減少に歯止めがかかることで、森林の二酸化炭素の吸収量が維持されるというメリットがあります。
ただ、垂直農業では、照明や給水システムなどの設備に大量の電力が必要です。
このため、エネルギー消費量が増加し、それに伴う二酸化炭素排出量が増える可能性があります。
垂直農業のメリットを最大限に生かすためにも、デメリットを最小限に抑える工夫が不可欠です。
センサーと制御システムの導入により、光や湿度、温度などの環境データを収集し、制御システムを活用して適切なタイミングと量で照明や給水を制御したり、施設の断熱性能を向上させることで、室内の温度を安定させ、熱を外部に逃がすことなく維持できるため、照明や冷暖房装置の使用を削減するなど、様々な工夫がなされています。
再生可能エネルギーの使用や効率的なエネルギー管理などの取り組みにより、デメリットを軽減することができます。
垂直農業施設の屋根や壁面に太陽光パネルを設置することで、太陽光エネルギーを利用することもできますし、施設内の有機廃棄物や生ごみをバイオガス化することで、メタンガスを生成し発電することもできます。
このバイオガスは燃料として使用され、垂直農業施設のエネルギー供給にも利用できます。
垂直農業施設に太陽光パネルや風力発電などの再生可能エネルギーを導入することで、電力の自給自足を図ることもできます。