国産小麦はどこまで増やせるのか
前回までに、小麦の代わりに自給率の高い米を代替品として使用する可能性について考えてきました。
小麦のカロリーベースでの自給率は2020年度で15%となっています。
2010年度からは5%増加しており、増えてはいますが低い水準であることは変わりません。
小麦の高騰により物価に大きな影響を受けてしまうのは、自給率の低さが起因しています。
実は、日本でも1930年代から1940年代には小麦の生産は盛んでした。
1940年には過去最高の179万トンの生産があり、自給率が100%を超えて、海外に輸出していた時期もありました。
その後、戦争の影響で小麦の生産も大きく落ち込みます。
米と比較して収益性も高くなかったため、戦後も生産量は回復しませんでした。
政府も小麦の自給率の上昇を目指しており、水田活用の直接支払交付金という制度を設けました。
水田を活用して、小麦などを生産する農家に助成金が支払われます。
小麦は湿気に弱い作物なため、収穫量は天候にも大きく左右されます。
降水量の少ない地域に小麦の生産が地域が多いのはそのためです。
日本での小麦栽培は秋播き栽培が主流です。
秋に種子を播いて翌年の6月から8月に収穫するのですが、ちょうど梅雨の時期と重なるため、品質に影響が出てしまいます。
近年は、梅雨のない北海道以外の地域でも栽培できるように品種改良が進み、国産小麦の栽培技術も高くなってきています。
北海道の十勝地区は畑作地域ですが、連作障害をを防ぐため、小麦を主要な作物に据えて、ブランド小麦としての地位を確立しつつあります。
質の高い小麦を作ることで地域ブランドとしての価値を高められるため、収益性も高くなり、北海道以外でも小麦の品種改良や栽培技術の革新に力を入れる地域が増えてきました。
もともと日本は十分な量の小麦の生産がされてきていたわけですから、今後、さらに生産量が増えて自給率が回復していくことが期待されます。